Wellnest Home

OTHERS

森と人。
―暮らしに想いを馳せる―

株式会社WELLNEST HOME
私たち日本人にとって心休まる風景とはどんなものだろう。
どこまでも広がる水田と山々が織りなす牧歌的な風景、素朴で親しみのある田舎の暮らし、喧騒から離れ自然の中でひっそりと過ごす時間…。
なぜこれほどまでに、私たちは森に心癒されるのだろう。
森と私たち人間にとってちょうどいい関係性、100年後の在り方について考えを巡らせてみた。

森が与えてくれる、豊かな恵み

森林が国土面積において占める割合は、世界平均で3割だという。
それに比べ、私たちが暮らす日本は7割近くが森林という緑豊かな国。
少し車を走らせれば、すぐに美しい山々の景色が出迎えてくれ、都心部でさえも公園や神社、ビルとビルの狭間に緑を感じることができる。
私たちの住む日本は、便利に最適化された都市環境を持ちながらも、自然がいたるところに溢れている森林国。そんな環境である理由は遥か昔から続く、森と私たち人間の関係性。脈々と続く営みが関係しているのかもしれない。
そんな豊かな自然、とりわけ森の恵みを私たちは遥か昔から享受してきた。
例えば安全。森は土砂災害の防止や土壌の保全などに役立っている。
森があることで、大雨などの影響による地表侵食を防ぎ、洪水は緩和されてきた。また動植物の生態系は維持され、人々は守られ、安全で健やかな暮らしを送っている。森が育んだ山菜やきのこなどの食料は、人間の大切なエネルギー源として重宝されている。
森が環境へ及ぼす影響も私たち人間にとって深い関わりがある。
木は温暖化への影響が最も大きいとされるCO₂を吸収し、成長とともに酸素を放出していることはよく知られている。国内で年間に吸収されるCO₂の約9割が森林によって吸収されている。
これから先、気候緩和や大気浄化など世界的な環境問題への対策を考えても、森の存在は欠かせない。

暮らしを潤し、美を育む森

森の恵みとして他に挙げるとすれば、私たち人間のからだや植物にも欠かせない水だ。
森には浄水作用がある。
森に降った雨は何層にもわたる地層を通ることで、じっくりと時間をかけてろ過される。
その機能は“自然の貯水タンク”とよばれ、化学物質が取り除かれ、地層のすきまや岩の割れ目を通り適度なミネラル分を含んだ水は、綺麗に、おいしくなる。
そうして地表へ湧き出てきたその水は、田畑を育て、そこに暮らす人々の営みを支えてきた。
もしかしたら私たちが今口にしている食物も、そんなふうに森が育む清らかな水で育っているのかもしれない。
また、日本の美の感性にも森の存在が大きな影響を与えている。
日本では古くから木材を使い家具、身の回りのもの、さらには伝統工芸品を生み出してきた。
職人の手により建築装飾が施された神社仏閣、寄木細工や彫刻をはじめとした美しい伝統工芸品、そして各地で古くから執り行われている祭りにも木は欠かせない。それらを見るたびに、“美しい”と感じるのも、日本人の美的感覚が森によって育まれてきたからだといえる。
森はまさに私たちの日常の暮らしに潤いを与え、美を教えてくれる命の源である。

正しく使い、還す、持続可能な未来へ

では、私たち人間はどうだろう。
森から受け取った恵みを受け取るばかりで、還元できているのだろうか。
近年では2050年のカーボンニュートラル実現への動きが具体化する中で、与えられた恵みを“正しく”使い、循環させるという持続可能な考えは当たり前になりつつある。
森が吸収したCO₂は、炭素としてそのまま蓄えられる。仮に、資材として活用するために木を切ったとしても、炭素は保たれたまま長期保存されるという利点がある。
さらに木材は省エネ資材として知られ、鉄などの他資材より製造時のエネルギー消費も少ない。それらを積極的に暮らしや産業に取り入れていくことはむしろ、環境配慮への第一歩と言えるのではないか。
適材適所で正しく使うこと。それこそが森に対して私たちができること。
いわゆる「植えて、育てて、伐って」という物質生産に直結した林業ではなく、先ほどから挙げてきた森林の多面的機能のバランスを図りながらマネジメントを考えていかなければならない。そうすることで、生来からの生態系を守りつつ、若い木はより多くのCO₂を吸収してくれる。
こうして一つひとつ積み重ね、きちんと森へと還していくことで、100年先も豊かに在る森と共に育むことが、きっとできるはず。

これからも森と共に生きるために

今日本にある美しい森を残していくために、私たちはどのように森と対峙していくべきだろうか。そして今後の在り方の最適解とはなんなのだろうか。
もしかしたらこんなふうに立ち止まって、考えを巡らせてみること自体が、これからの100年を考える一歩なのかもしれない。
与えられるばかりではなく、私たちができることを考え、森へ還していく。
この考えを常に持ち続けることは、物質的な豊かさだけでなくその先の心の豊かさや幸せ、平和へとつながっていく。
互いを想い、互いに与え合う。
森と私たち人間のちょうどいい関係性は、もしかしたらそこに尽きるのかもしれない。
シンプルでいて、とても大切なことを、森が教えてくれた。
 
 
参考:
森林について』(林野庁)
RELATED STORY
関連記事
はじまりの旅―私がドイツで出会ったもの―
READ MORE
先人から受け継ぐバトン―100年先を見据えるまち―
READ MORE
TALK WITH vol.3―中谷哲郎×早田宏徳 最良の未来へ(前編)―
READ MORE
TALK WITH vol.2 ―早田宏徳×道脇裕 未来に残す「もの」―
READ MORE
NEW ARRIVAL
新着記事
VOICE FROM vol.4 ―今泉太爾 未知なるものに挑む―
READ MORE
未来への手がかりを掴みに―ドイツ・スイス視察紀行―
READ MORE
日本の暮らしとは。―木造建築と風土の関係―
READ MORE
VOICE FROM vol.3―村上敦 在るべき場所に、在るべきものを―
READ MORE
VIEW ALL